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「これで様子を見ましょう」←実はNGワードです!!

今回は、殆どのお医者様が使うであろう、「これでひとまず様子を見ましょう」系の言葉について、患者の耳にはそれがどう聞こえるのか。
全く同じ意味なのに、もっといい言葉が他にあるということを、ご説明させていただきます。

目次
  1. 「これで様子を見ましょう」がもたらす悲劇
  2. 様子見からの医者不信
  3. 「これで様子を見ましょう」の言い換え
  4. まとめ

「これで様子を見ましょう」がもたらす悲劇

ある患者が体の不調から、クリニックを受診しました。
診察したお医者様は、こう考えました。
「この症状だったら、Aという薬を使えば90%以上の確率で治る。もしAが効かなかったとしても、次にBという治療法を使えば、ほぼ確実に治すことができる」


そしてお医者様は患者に言いました。
「Aという薬を1週間分出しておきます。これでひとまず様子を見ましょう」


一見、何の問題もありません。
Aという薬を服用して、1週間経っても治らなければ、患者は同じクリニックを受診して、今度はBという治療法を使ってもらえば良いのです。


1週間後、患者は来ませんでした。
ということは、当初の見立て通り、薬Aが効いたのです。
9割以上に効くのですから、当然と言えば当然です。
これでまた一人、患者が救われました。
めでたし、めでたし。


残念ですが、事実は違います。
患者は1週間経っても治りませんでした。
そしてこう思いました。
「あの医者は信用できない。別の診療所に行こう」


次のクリニックで、患者はお医者様に、薬Aが効かなかったことを説明しました。
そのお医者様も、前のお医者様と全く同様に、薬Aが効かない患者には、治療法Bを使えば、ほぼ確実に治すことができると考えました。
そして実際に、その日の受診で治療法Bを使い、患者を治しました。
患者は感謝しました。
「あなたこそが名医です。他の医者が治せなかった病気を、治してくれたのですから」


その患者が口コミサイトを使っていたとしたら、最初のクリニックと次のクリニックに、どのような口コミを投稿するのか、ご想像の通りです。

様子見からの医者不信

何故、このようなことが起こるのでしょうか。
患者が愚かだからでしょうか。


たとえばの話です。
その患者は、以前、慢性前立腺炎で、泌尿器科に掛かりました。
尿検査の結果は、非細菌性でした。
医者は抗生物質を処方しました。
「どうして非細菌性なのに抗生物質を出すんですか?」
患者の疑問に医者は答えました。
「尿検査で検出できない細菌がいて、それが原因で痛みを起こしているからだよ。まずはこれで様子を見てください」
グレースビットが出されましたが、治りません。
2回目の診察では
「じゃあ別の抗生物質に変えるので、これで様子を見てください」
ミノマイシンが出されましたが、治りません。
3回目の診察では
「次はまた別の抗生物質に変えるので、これで様子を見てください」
バクタ配合錠が出されましたが、治りません。
効かない薬と、様子を見てくださいという空虚な定型句。
数か月通院しても、一向に良くなりません。
激しい痛みで、迷走神経失神を繰り返す、地獄のような日々が続きます。
患者はクリニックを変えました。
そこで、桂枝茯苓丸とエブランチルを出されました。
すると、服用を始めて翌日には痛みが減り、3日後には症状がほぼ完全に治まったのです。
患者は思いました。
「腕の良い医者は、初診で治せる。すぐに効かない薬を出して、様子を見てくださいと言う医者は、皆ヤブ医者だ」


このように短絡的に考える患者には問題がありますが、それでも100%患者が悪いと言い切れるのでしょうか。
「(多分駄目だと思うけど、もしかしたらこの薬で治る可能性も0ではないから)これでひとまず様子を見ましょう」
「(恐らくこの薬で治るし、治らなくても他の治療法もあるから)これでひとまず様子を見ましょう」
患者側からしたら、全く同じに聞こえてしまいます。
もしあなたが後者のお医者様だった場合は、非常に勿体ないと思いませんか。

「これで様子を見ましょう」の言い換え

それでは、どう言い換えるべきか、ご説明させていただきます。


最初の例であるなら、素直にそのまま伝えればいいだけです。
「Aという薬を1週間分出しておきます。これでひとまず様子を見ましょう」
ではなく、
「この薬で殆どの患者さんは良くなるので、1週間分出しておきます。もし効かなければ、他の治療法があるので、1週間後にもう一度来てください」


しかし、患者の症状によっては、必ずしも効く可能性が高い薬を処方できるわけではありません。
なので、もう少し汎用的なパターンを紹介します。
「お薬を出しておきますので、ひとまず様子を見てください」
これを
「このお薬で良くなる可能性があるので、効果を確かめさせてください」
と言い換えましょう。
薬を出して経過観察をしますという、言葉の意味は全く同じですが、患者からの印象は大分変わります。
前半部では、可能性があるものを考えた=患者のために何かしてあげられないか考えた、というニュアンスを含め、後半部では「ください」というお願いをするような表現を使うことで、優しい雰囲気を出すことができます。

まとめ

患者は、「様子を見ましょう」にネガティブな印象を持っていることが少なくありません。


実際には、様子を見ましょうで良くなる事の方が多くても、良くならなかった時の方が記憶に残りやすいせいで、様子を見ましょうと言われると、この医者は自分を治せないのではと、勘違いする患者もいます。


時代と共に、言葉の受け取られ方は変わります。
現時点で、「様子を見ましょう」という言葉を好意的に捉える患者は少数です。
もし可能であれば、もっと適切な別の言葉で言い換えましょう。
そうする事で、好感度や評判が上がり、その小さな積み重ねが、クリニック経営の安定に繋がるはずです。